コラム

【現役日本語教師の正直インタビュー】人生の岐路に関わることができる幸せな仕事だな、と感じています

日本語教師養成講座 コラム

現役日本語教師にインタビュー!

①日本語教師を目指したきっかけはなんですか?日本語教師になるまでには、どのような経緯がありましたか?

15年間、専門学校でITを教えていました。クラスの1割ぐらいが留学生だったので接する機会が多くありました。 直接的なきっかけとしては、留学の引率でマレーシアに行った際、日本語学校の校長先生宅にホームステイさせていただき、日本語教師に興味を持ちました。
帰国後、本屋で日本語教育能力試験の問題集を見たときに「音声」問題に不安を感じたのですが、養成講座受講前のカウンセリングで「独学では厳しい部分だからこそ学校で学べば安心!」と教えていただき、実際に半年の講座受講で無事合格することができました。

②どうして今ここ(国内)で働くことを決めたんですか?

養成講座で学んでいるときに併設の日本語学校を勧められました。会話イベントなどで学生と接する機会が何度かあり、学校の雰囲気が良いと感じていました。2018年秋、養成講座修了後、そのまま採用いただき日本語教師としてデビューしました。
2019年春、学校法人の学校でも働き始めました。
2020年春、フィリピンの提携校で働くことが決まりましたが、コロナ禍によりいったん話が保留となりました。
コロナ禍、いろいろなチャンスをいただき、現在は3校の学校でそれぞれ学習目的が異なるクラスを受け持っています。 いずれまた海外も検討中ですが、今は私自身日本でまだまだ学ぶことがある、と受けとめ、励んでおります。

③今どのようなことを教えていますか?

初級、初中級、中級、中上級、上級、超級、と幅広くいろいろな学習者の授業を受け持っています。また、大学や院、専門学校の進学希望者、就職希望者、すでに日本で働いているビジネスマン、日本で働いている方のご家族、など多様なクラスの授業を受け持っています。また、文法や会話だけではなく、JLPTなどの試験対策に特化した授業や、漢字のみのクラス、就職対策講座なども担当しています。
わたしの授業のモットーは「楽しくて、わかりやすくて、役に立つ授業」です。何より楽しくなければ、明日学校に来る気持になれない。わかりにくい授業は苦行。楽しくてわかりやすくても簡単なだけで役に立たないのでは意味がない、と考えています。
初級には初級の、上級には上級の、それぞれの難しさ、楽しさを感じています。
また、15年間 専門学校教員として働いた経験を活かすことができるのも喜びです。就職指導は日本人相手でも簡単ではありませんでしたが、留学生はさらにハードルが上がります。だからこそ、日本で働くことを希望されている方のお力になれると本当にうれしく思います。

④日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

国によって学習のスタイルが大きく異なることに最初は戸惑いました。文字や文法を重視するタイプ、耳から覚えてほとんどノートは取らないタイプなど、いろいろです。最初は戸惑いましたが、今は無理に自分の考える正解を押し付けるのではなく、学習者の方が自分のやり方を模索しているとき、改善したいと考えているときだけ、おすすめの方法を提示するようにしています。日本語のレベルが上がるにつれ、学習者の学習スタイルも変わっていくので、今は彼らの多様性を取り入れ、初級レベルの学生に紹介したりもしています。

⑤「日本語教師をやってよかった!」と、どのような時に実感しますか?

小さい喜びとしては、毎回の授業やクラス替え、卒業などの節目の際に「先生の授業は面白くてしかも役に立った」と言ってもらえることです。自分のやり方が間違っていなかったのだ、と励まされます。
大きい喜びとしては、日本語学校を卒業した学習者が学校に遊びに来てくれて進学先や就職先でのことを話してくれる時です。日本で学んだり働いたりすることを選択した学習者が希望を叶えて、その先の未来のために頑張っている様子を聞かせてもらうと、人生の岐路に関わることができる幸せな仕事だな、と感じています。

⑥今後どのような日本語教師になりたいですか?また、これからやってみたいことはありますか?

3つのことを考えています。
ひとつは自分の経験が活かせる、専門学校進学、就職指導です。
ふたつ目は海外での日本語教師です。海外でのニーズは日本でのニーズとはまた異なる部分があります。外国人の中に一人で入っていくのはアウェーでもありますが、わくわくもします。
最後のひとつは、親御さんが日本語母語話者ではない中学生の日本語教育です。私の経験値がもう少し上がってから取り組みたいと考えています。専門学校で就職指導をしていた際に、話す日本語レベルは問題なくても読み書きの日本語レベルが厳しい学生がちらほらいました。留学生よりも、日本で育ったけれども日本語が家庭での第一言語ではない学生たちの方が苦労しました。学力的・人格的にも申し分なくとも、読み書きで後れを取ると、企業の筆記試験やエントリーシートなど、第一関門で落とされてしまいます。留学生は母語が生かせたり、別枠での試験があったりもしますが、日本人なのに日本語が・・・という学生はかなり不利でした。そのケアを中学生くらいから対応できたら(もちろんもっと早ければ早いほうが良いというご意見もあるでしょうが、日本語教師だけではなく多方面の先輩方のお話をお聞きすると第二言語は中学生からで十分だという説が有力と認識しています)と考えています。

<授業・参考>

⑦教案・授業作りで参考にしているウェブサイトは?

アイディアやイラストなどを検索することはありますが、私は基本的にはネットで検索するよりも、授業づくりの際、自分のアイディアを大切にしています。
大体クラス授業はチームティーチングです。2-4人の先生が日替わりでクラスに入ります。それぞれの先生の持ち味だったり、強みだったりが活かせると、学生にとっても一週間飽きずに学べるのでは、と私は考えています。 ネットの資料を使うと自分で分析する経験が不足してしまいます。授業準備は苦行ではなく「どうやったら楽しんでもらえるかな」「わかりやすいかな」「どんな場面を想定すると実用的かな」など考えるのは本来楽しいことです。それを積み重ねていくことで、学習者のいろいろな質問にも安心して答えられるようになります。ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

⑧教案・授業作りで参考にしている書籍は?

養成講座で学んでいるときに、何冊も文法書を紹介されましたが、一番のお気に入りは 『初級 日本語文法と教え方のポイント』 です。日本語教師になって最初の1年は特に何度も繰り返し読みました。
授業では、その日の文法項目だけではなく、付随した内容も質問されます。日本語教師になりたてのころは、十分準備したつもりでも想定外の質問が多くありました。その場で答えるべき内容、みんなで考えるべき内容、後で個別に対応すべき内容などあります。直接授業に関係なく、全体には説明しない方が良いと判断することもありますが、質問した人に対しては、気になったときに解答するのが一番良いと感じているので、日を空けず、休み時間や授業後に話すようにしています。そのため最初の一年はこの本を何度も読み返し、全体的な理解、それぞれの関連など把握できるように努めました。
ちなみにシリーズの 『中級 日本語文法と教え方のポイント』もおすすめです。

⑨教案作りのポイントは?

養成講座に通っているときには、教案はかなり頭を悩ませるものだと思います。私自身常に気になっていました。これから日本語教師になろう!という方々に、教案に関して二つお伝えしたいことがあります。
一つ目は「実際にクラスを受け持つようになると、そんなに悩まなくなりますよ」ということです。これは養成講座に通っているときに私も言われた言葉です。その時は意味が分かっていませんでしが、実際にクラスを担当することになると、学生の顔を思い浮かべながら授業を考えるのは、かなり負荷が下がる感触がありました。誰のためともわからない模擬授業の教案よりも、だれが何に興味があるのかとか、どんなことを目的にしたクラスなのかなどが明確になればなるほど、授業を想定しやすくなるからです。
二つ目は、教案を作る際には、教師と学生の発話を1行ずつ交互に記載することをお勧めします。よい授業ほど先生の発話が少なく、先生と学生で4:6とも3:7とも言われています。けれども経験が浅ければ発話の促し方も十分ではありませんし、4:6というのはかなりハードルが高いというか、最初はほぼ無理かな、と思います。これも養成講座の先生に教わったことなのですが「一行ずつ交互に書くことによって自分の発話を半分に抑えることができ」これを意識して教案を書くことで促し方のバリエーションを考える訓練にもなります。「学習者はどんな応答をするかな?」「どんな間違いがありうるかな?」 と考えるのは良い訓練となります。
今私は、教案の紙は用意しませんが、授業の組み立てを考える際には必ず学生への促しと応答を考えるようにしています。

<就職活動>

⑩日本語教師の求人について、どのようにお仕事を探しましたか?

今まで4つの日本語学校に関わってきました。また、ご縁があって東京都の留学生就職支援の拠点や、文化庁のお仕事にも関わることができました。
もうすぐ日本語教師歴7年目に突入する私ですが、サイト検索よりも、クチコミは大切だ考えています。
どんな仕事でも職場でも天国はありませんが、同じ業界でも環境の良し悪しは大きな差異を生みます。先生歴20年超の私からすると、「学生と先生を大切にする学校かどうか」は重要です。学生と先生こそが学校の財産なので、学生も先生も楽しく「明日も頑張ろう!」と思える学校である必要があります。そのためにはネットの声よりも、実際に知っている人からの評価のほうが信頼度は高くなります。Webや説明会だけでは見えないことが多いからです。
ただ、学校を実際に見学することも大切です。建物が古くてもそれはしょうがありません。しかし教室やごみ箱やトイレが乱れているところはやはり何か問題があります。また、学生の表情というのは取り繕えないからです。
学校の掲げる言葉がどんなに理想的で立派でも、学生たちの表情が良くなければ良い学校であるはずはありません。全体の雰囲気は日々そう大きく変わるものではありません。経験者の方で「この学校は自分が変えてやる」という大志があるなら別ですが、もし仮にそうだとしても、お勧めしません。学生と向かい合うよりも学校と闘わなくてはならなくなるからです。

⑪模擬授業ではどのような課題が与えられましたか?

1校は『みんなの日本語』31課の「意向形」、1校は『みんなの日本語』23課の条件の「と」、1校は『できる日本語』初級の7課でした。
教案も提出するよう言われた学校もありますが、経験5年を超えたあとは教案ではなくpptだけでも良い(流れや注意点などはpptのメモ書きで入力)と言われました。
文法の分析ももちろんですが、学習者への声がけや、どのくらい実際の授業を想定しているのか、一方的に教授する形なのか、双方向性があるのか、など多面的に判断されたと感じています。
わたしは最初の3ヶ月は教案を書いていましたが、義務でなくなったときに書くのを止めました。もともと複数のものを同時にチェックするのがあまり好きではなかったので、非表示pptやコメント欄にすべてを入力する方式に切り替えました。
教案を書いていた時期も、作成時はなんども読み返し修正しましたが、模擬授業や実際の授業の時には教案を見ていませんでした。私は教案を見ていたら学生が見えなくなるので、手元には大雑把な時間配分のメモのみ。あとは学生たちの表情を見ながら、時間的に大きくずれない範囲で対応していました。

⑫就職活動で参考にしたウェブサイトは?

6年間の経験の中で、4つの日本語学校に応募し、4校とも採用いただきました。いずれもWeb検索ではなく友人知人からの紹介でした。もちろん応募した学校のWebページは確認はしましたが、特に他校と情報比較はしませんでした。

⑬日本語教師が国家資格化しますが、登録日本語教員の登録はする予定ですか?

5年の猶予期間がありますが、2年以内には登録しようと考えています。 日本語教師ではない友人知人から結構この話題を振られることがあります。一般への認知が拡がり深まるのは良いことだと受けとめています。
日本語教育能力試験には合格しているので、10コマのオンデマンド受講とミニテストと修了試験を受ければ登録できると認識しています。今現在授業をたくさん受け持っており、その授業準備も必要なので、今年の登録者から生の声を聴いてまた判断したいと思っています。
今まで専門学校で多くの国家資格を多数指導かつ自分も受験してきた経験に照らせば、制度が新しくなる際には動きは早い方が良い(有利)と思われます。特に若い先生は早めに登録されることをお勧めします。

⑭日本で日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

心構えとしては、当たり前のことではありますが、学習者は自分とは違う人格で興味の内容や深さも異なるので「自分の正解を押し付けすぎない」ことが大切だと考えています。
アドバイスとしては「自分の武器は何か」を考えておくと、ニーズに応えられる仕事を探すことができます。英語や中国語が得意な方、それぞれニーズがあります。企業で長く働かれてらっしゃった方はそのビジネス経験が活かせますし、子育てしかしたことがないという方も、日本の公立私立の小学校・中学校の児童生徒へのニーズに応えられますし、その親御さんに対してのレッスンなどにも経験を活かすことができます。私の養成講座での友人や、日本語教師になってからの同僚・先輩方も、それぞれ自分の強みを活かせて、ニーズに合う内容の現場でそれぞれ活躍されています。

画像の説明
国内の日本語学校勤務 非常勤講師
小林いずみ
専門学校でITを教えていた経験を生かし、2018年秋に日本語教師デビュー! 初級、初中級、中級、中上級、上級、超級、と幅広くいろいろな学習者の授業を受け持っています。授業のモットーは、「楽しくて、わかりやすくて、役に立つ授業」
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