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【現役日本語教師の正直インタビュー】自分が受けてきた日本国内の教育を参考にしないことをお勧めします

日本語教師養成講座 コラム

現役日本語教師にインタビュー!

①日本語教師を目指したきっかけはなんですか?日本語教師になるまでには、どのような経緯がありましたか?

大学時代、ニュージーランドに留学をして、英語を勉強していましたが、「外国人はどうやって日本語を勉強するんだろう」と疑問に思ったことが最初のきっかけです。
ある時、留学していた大学の日本語クラスを見学させてもらい、日本語を全く知らない言語のように感じて、日本語教育に興味を持ちました。
大学卒業後は日本国内の大学院に進学し、日本語教育を専攻しました。それ以来、日本語教育一筋です!

②どうして海外で働くことを決めたんですか?

留学時からずっと欧米圏で働きたいという思いがありました。ニュージーランドの生活に慣れてしまい、日本社会で働くことが不安だったので、就職活動時、日本国内で働くことは全然考えていませんでした。就職に失敗したら、ワーキングホリデーを使って海外に行こうと考えていました。

③どのようなことを教えていましたか?

ニュージーランドの大学では、ニュージーランド人学生や台湾、ベトナムからの留学生を対象にN5〜N2までの授業。また、四技能統合クラス、JLPT対策クラスなどを主に担当していました。
他にも各学期に1回、日本文化体験クラスとして、浴衣や茶道、七夕などを体験できるような授業も行いました。

④日本語教師として苦労したこと、戸惑ったことはありますか?

コロナ禍が非常に大変でした。数ヶ月間ロックダウンが行われ、出勤はもちろんできなかったので、突然授業が全てオンラインになりました。
オンライン授業は受けたことも実施したこともなかったので、苦労の連続でした。学生が友達と外を歩きながら、授業を受けたいたことが発覚した時には、心が折れそうになりました……。
苦労して作ったPPTや教材も学生には全く響いておらず、それからいい意味で手を抜くようになりました(笑)

⑤「日本語教師をやってよかった!」と、どのような時に実感しますか?

小さなことでも学生が「日本語でできようになった」と喜んでいるときです。
例えば、学生がカタカナで自分の名前を書けるようなった時には、一緒にハイタッチをして喜び合ったのを覚えています。他にも、スピーチコンテスト優勝やJLPT合格、就職先が決まったときなど、学生が目標を達成できた時は、教師としての自信にも繋がりますし、日本語教師でよかったと実感します。

⑥今後どのような日本語教師になりたいですか?また、これからやってみたいことはありますか?

学習者の人生の選択肢を増やせる教師になりたいと考えています。私自身、英語が使えるようになって、人生の選択肢が一気に広がりました。教師としてできることは、勉強する機会や勉強方法を教えることなど、とても少ないです。勉強するかどうか、また将来の道を選ぶ選択権は全て学習者本人にあります。日本語が少しでも上達し、一つでも多くの選択肢を持てるように、サポートすることを心がけていきたいと思っています。

<授業・参考>

⑦教案・授業作りで参考にしているウェブサイトは?

日本語NET:例文が多く、英訳もついているので、文型を説明する際のキーワードを考えるときに使っています。

Oonline Japanese Accent Dictionary(OJAD):オンラインの日本語アクセント辞書で発音指導の際に使っています。特に「韻律読み上げチュータスズキクン」というページは自由に文を入力でき、発音表記をしてくれるので、学生にも紹介したりしています。

⑧教案・授業作りで参考にしている書籍は?

日本語基本文法辞典:初級文型が全て英語で書かれているので、文型の英名(可能形 potential formなど)を確認したい時などに使っています。

日本語教育のための文法コロケーションハンドブック:初級の文型ごとに共起しやすい語彙がコーパスと教科書の二つの観点からまとめられているので、教科書に出てくる語彙以外で例文を作りたい時に使っています。

日本語教師のためのテスト作成マニュアル:テストだけではなく、プレゼンテーションや作文などの課題を作成する際の評価基準などが細かく書かれているので、成績に直結する評価内容を考えるときに参考にしています。

⑨その国で日本語を教える前に準備すべきだったことは?

日本から小道具を持って行くべきだったと思うことが多々ありました。
特にニュージーランドでは、授業中ずっと座って先生の話を聞くという教育方針ではなく、協働学習や校外学習などで実体験を積むということが重視されています。ですが、クラスの外に出てしまえば全て英語の世界なので、クラス内でいかに日本の環境を作れるかがキーでした。
例えば、「レストランで注文ができる」という目標であれば、日本語のメニューやお金などのレアリアが必要です。しかし、ニュージーランドではもちろん手に入らないので、渡航前に100円ショップなどに行ったり、チラシをとっておけばよかったなと心から思いました。

<就職活動>

⑩現在の日本語学校、またそれ以外の施設等で働くきっかけ・決め手は?

国内外、教育機関問わず、私が重視していることは、私とその職場が大切にしていることが一致しているかどうかです。日本語を習得することを目標にしているのではなく、習得したその先にあるものを目指して教育をするということを大切にしています。これまでの職場も現在の職場も、卒業後のことを大切にしているので、それが決め手になりました。

⑪現地で日本語教師の需要はどのくらいありますか?

正直なところ、ニュージーランドでの日本語教育の需要は減少傾向にあります。手に職をつける文化が根強いため、日本語を勉強したところで明確な就職先がないというのが多くの人の考えです。
特にコロナ禍でこの傾向が強くなりました。学習者自身が日本語を勉強したくても、その家族が反対して諦めるというケースもありました。
現在はコロナが落ち着き、アニメなどの日本のポップカルチャーも人気なので、今後、需要が高まる可能性はあると思います。

⑫海外の日本語学校で求められる資質や資格、経歴や語学レベルは?

私が勤務していたのは大学だったので、学士以上の学歴が必要でした。内定をいただいても、Visa取得というハードルがあり、これは年々高くなっています。特に教育業界の場合は、修士以上が必要だとよく言われています。また、私がVisaを申請した際には、海外大学進学に必要な英語力と同等のレベルがあることを証明する必要がありました。

⑬海外の日本語教師の求人について、どのようにお仕事を探しましたか?就職活動で参考にしたウェブサイトなどありますか?

就職活動時、私は大学院に在籍していたので、大学院の就職支援にお世話になっていました。また自分では日本語教育学会のホームページにある教師募集情報などをチェックしていました。しかし、新卒だったので条件的に厳しい思いをしました。
そんな時、偶然にも大学でお世話になった先生から、私が留学していた大学で日本語教師を募集しているというお話をお聞きしたのが、ニュージーランド勤務の始まりでした。大学の先生には本当に感謝しています。

⑭その国で日本語教師を目指す方へ心構え・アドバイス。

自分が受けてきた日本国内の教育を参考にしないことをお勧めします。
毎日宿題があり、定期的にテストをし、長期休みも勉強に時間を費やすというのは、ニュージーランドではありません。
赴任当初、ほぼ毎日宿題を出していたら、学生から不満の声が上がり、上司からも注意をされたことがありました。そのため、机上の勉強ではなく、日本人留学生を授業に招いたり、他大学とオンラインで授業を行うなど、教科書とは離れた授業を積極的に取り入れるようにしました。日本人と友達になれるきっかけがある授業は学生たちの間でも一番人気でした!

画像の説明
常勤講師 国内の日本語学校勤務 
M.T.
2018年に大学院を修了、岡山県にある私立大学の留学生別科で半年、ニュージーランドの大学で学部生を対象に3年間授業を行う。帰国後、東京都内の生活者向け日本語教育機関に2年勤めて、今年7月からカナン東京勤務。教師歴6年!ゼロ初級〜N1以上のクラス、ビジネス日本語、プライベートレッスンを経験。日本語教師デビューから心掛けていることは、大学院の先生に言われた「臨機応変」「教師は教壇に立ったら俳優(文型導入時は特に)」!モットーは「学習者も教師も楽しく学べる授業」です!
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